自己資金スタートですというお話

「会社はどこか出資を受けてスタートしたんですか?」と言われることがある。

当社は、僕と井坂の貯金で作った会社である。
起業したと同時に、二人の借家は無くなった。
井坂の家は激安だったが、それでも住めないくらいの貧乏になった。
会社近くの銭湯に行くよりも、オープンプライスでやっていたスポーツジムのほうが安かったので
そこで契約をして、風呂に入っていた。ジムでの運動も最初はしてたけど
すぐに土日の余裕も無くなったので、風呂のためだけに使うようになった。

一年間、間借りオフィスにあるウォーターサーバーは水飲み放題。
一度も自分で飲み物は買わなかった。
ごはんは業務用カップ麺がメインと11本入りのスナックパンを3回に分けて。
お金は300万しかなくて、信用もない僕らの会社はすべて前入金。

粗利15%の商売。300万を前入金して、300万の売上で粗利45万。
家賃やら、僕ら二人の給与を引くと十万いくかいかないかの利益を毎月稼ぐのに必死だった。
社会保険は痛かった。
打合せ場所が喫茶店だったときは、絶望した。
お客様が出してくれた時は必ず、「すみません。必ず成果でお返しします」と言っていた。
情けない気持ちを入り交ざりながら、帰りの電車で「絶対にお返しするんだ。俺ならできる」と
手すりにつかまりながら念じるように思っていた。
そう思わないと情けないという気持ちをもった自分に負けそうになるからだ。

お客様にもお願いをした。いくつかのお客様には事情を理解いただき
前入金にしてくれた。クライアント様からの前入金の管理をしながら
自社の前入金と、広告主の前入金分を計算するのは大変だった。

もし前入金で入れていただいたクライアント様の成果をお返しできず
返金を希望された場合、返さないといけないからだ。
毎日、エクセルに記録をしながらドキドキしていた。
このまま効果が出なかったら、返金しないといけない。
そのシミュレーションをすると、どんだけ眠くても眠気が吹っ飛んだものだ。
眠眠打破の比じゃない。

大きい予算が決まった時、会社の残預金を超えるくらいだったことがある。
その時も必死に交渉した。
支払い調整がわかるのが明日だと言われたときは、会議室で一人で泣いた。
どうしよう、支払いサイトが調整できなかったらと。
結果、調整できた。
そのときは全身から力が抜けた。

危ない綱渡りをしていたと思う。
それは今でも変わらないか。
それをするために起業したんだし。

自己資金で経営するなんてすごいですねとよく言われる。
活気的なビジネスモデルが浮かんでいたわけじゃないし、
出資をしてもらえるなんて当時は思っていなかった。
起業すると言ったら、「お前でできるなら、だれでもできるわ」的なことを言われ捲った。

自己資金でどうしてやってこれたのか。
ただ、そのときある身銭を最低限にして、ひたすらできるだけ投資した。
うまくいったことも、いかなかったことも沢山あったけど、今もあるけど。
ただひたすら前を見てやっていた。
大変だったけど、あの経験が教えてくれたことは大きかった。

そして、自力だけでは決してない。
本当に人に恵まれた。間借りをさせてくれた社長。信じてくれた取引様。
どんな時も信じて付いてきてくれている井坂。なんか楽しそうと入ってきてくれた社員。

自分らしく一生懸命フルアウトしてきたけど、人の力なくして
間違いなく今はなかったと思う。

最近、「自己資金すごいですね」と言われるので書いてみました。

初心を忘れずフルアウトしていきます。

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